事例紹介 / リフォーム
木製サッシにエコガラス!
真壁の家で趣あるエコリフォーム
東京都 N邸
- 立地
- 東京都世田谷区
- 住宅形態
- 木造2階建
- リフォーム工期
- 2021年10月(2日間)
- 窓リフォームに
使用した主なガラス - 真空ガラス
- 利用した補助金等
- グリーン住宅ポイント
寒さ厳しい和風住宅の窓は木枠。エコリフォームできるか?
「木枠の窓をエコガラスでリフォームした」と聞いて訪ねた都心の家は、切妻屋根を戴く“真壁(しんかべ)造”でした。
真壁造は現在主流となっている“大壁(おおかべ)造”と異なり、柱や梁が見える伝統的な木造構法です。和風のイメージがあり「おばあちゃんちみたい」と懐かしく思う方もいるかもしれません。
祖父の代から住み継ぐこの土地にNさんは三十数年前、住宅を建てました。「窓がたくさんあって、窓枠は木製に」と設計者に依頼したといいます。
敷地の奥にはお母様が住まう築70年超の母屋があります。広縁が回る伝統的な平屋で、自邸は庭をはさんで向かい合う位置にしました。
1階にリビングダイニングと水まわり、2階に寝室と仕事部屋のあるN邸は、施主が希望したとおり多くの窓に囲まれています。
とりわけ印象的なのはダイニングスペースのコーナー窓でしょう。中庭を望んで南と西に開き、ゆったりとした窓台もついています。
他の窓もすべて木製の枠で、サイズも大きめ。障子にはベンガラを施したりと趣ある開口部ばかりです。
エコリフォームを考え始めたのは、冬の寒さがきっかけでした。「家は寒いものだとずっと思ってきましたが、ここ1、2年で辛くなってきてね(笑)」
以前はガスストーブとエアコン、ホットカーペットの上にもう一枚カーペットを重ねるなど暖房機器だらけの暮らしでした。起床後、1階のストーブをつけて寝室に戻り、部屋が暖まったところで再度降りていたとのこと。
リビングに居る間は暖房を回し続けるも、スイッチを切って外出し、戻ればすでに室内は冷えている…という状況でした。
結露も激しく、木製の窓枠が傷んでしまったのも必然でしょう。
どうにかしなければとNさん、まずはリフォーム会社に相談します。
アルミ建具はいらない。木サッシにエコガラスを入れ替える
勧められたのは内窓の設置でした。
「内窓では木枠が見えなくなるでしょう? それなら外につける方がましですよ。2回開け閉めするの億劫だし、間にゴミがたまったらどうしたらいい?」
窓を大切にしてきた住まい手が受け入れられる提案では到底なかったのです。「この家は窓が多すぎる、とも言われましたよ」と苦笑まじりにNさんは振り返ります。
手法を変えてガラスメーカーのウェブサイトを調べ、見つけたのが加藤硝子店でした。窓の断熱改修はもちろん、キッチンや水まわりの交換、家まるごとのスケルトンリフォームまで手がける“住まいのプロショップ”です。
現地調査にやってきた油井秀介さんに、Nさんは「木の窓枠を残して複層ガラスを入れられるかどうか」相談。現場を見た油井さんが提案したのは、エコガラスの一種・真空ガラスによる改修でした。
三十年以上の時間を経た木製の窓にエコガラスを入れ替える…かなり難しいのでは、とも思えます。
しかしふたつの僥倖がN邸のエコリフォームを可能にしました。
ひとつめは、窓そのものの形態です。
油井さんいわく「N邸の窓は本物の“木サッシ”なんですよ。木の枠にガラスをコーキングで留めつけるのでなく、グレージングチャンネル(グレチャン)*を使っていました」
ガラスと枠が直に接着されておらず、一般的なガラス窓同様の方法でガラスを入れているため、交換が比較的容易だったというのです。
ふたつめは障子の溝の幅でした。
「もともと厚めのガラスが入っていて、溝幅が9mmありました。これだけあれば真空ガラスが入ります」
もしもこの幅が小さかったら、アルミニウム製の部材が必要になる可能性が高かったとのこと。
何よりも油井さんをとらえたのは「この木サッシにアルミ部材を入れるのは、ちょっと違うだろう」という視点だったといいます。
そのときには「どうしてもダメならアルミが入っても仕方ない」と半ば諦めていたNさんの思いに寄り添い、尊重する。真の意味での“お客様本位”の心が、そこにあるのではないでしょうか。
性能向上は住まい手の思いあってこそ
2021年の10月に2日間をかけて行われた工事はやはり通常より「大変でしたね」と油井さんは笑います。
結露で傷んだ木の窓枠は開け閉めやクレセントの調整、ネジの交換なども手がかかり、場所によって多少の木工事も必要だったといいます。
木造住宅全体の歪みの影響もあり「相当腕のいい職人さんたちじゃないかと思った」とNさん。網戸の張り替えまでを含め、すべてを気持ちよくやってくれたと破顔一笑しました。
そして迎えた冬、ガスストーブはお役御免となり、エアコンを回すのは夜のみに。室内の服装はセーターからシャツに変わりました。以前は近づきたくなかった窓辺のヒンヤリ感もなくなって「メンタル面が軽くなりました」
今はエコリフォームの余韻を楽しみたいと話しながら「庭の眺めも楽しみたいですね」とコーナーガラスの外へと目をやります。
「ガラスを換えてここまで快適になるとは夢にも思わなかった」Nさんの言葉は、エコリフォームした方々の多くが共感する感想でしょう。
ガラス屋さんは割れ換えをするお店だと思っていた、とも。
けれど「リフォーム店に相談しても、内窓やアルミ窓のことしか話さなかった。油井さんが木サッシを生かす提案をしてくれなかったら、どうなっていたかわからないです」
補助金についても「加藤硝子さんは細かい手続きまでちゃんとやってくれました。以前に床をやってもらったリフォーム店は現場写真も撮っておらず、申請できなかったんです」
続けられた「家についての相談相手ができてよかった。今後も何かあったら加藤硝子さんに相談したいですね」との言葉から、醸成された厚い信頼が伝わってきます。
隣で話を聞いていた油井さんは「工事が終わるまで、実はドキドキしていました」と照れ笑い。何はともあれやってよかった、窓枠がグレチャンだったからと繰り返しました。
真空ガラス交換の提案は大成功でしたね、と水を向けると「そもそも特殊なお家ですから、今のままにしておきたいのが本当の思いだろうと。性能だけのお話ではないはずですよね」
- 取材協力
- (株)加藤硝子店
https://madoa-f.jp/
- 取材日
- 2021年12月10日
- 取材・文
- 二階さちえ
- 撮影
- 小田切 淳