築60年近い古い家を、なぜ建て替えずリフォームしたのですか? 率直に問うと、Kさんは笑って「お金がなかったからね」
そして表情を引き締め「ここは自ら育て上げた家だから。あらゆる部分を自分で改造したから、自分自身なのですよ。木造の家は自分で手を加えていくほどよくなり、限界がない。百年でも持ちます」と答えてくれました。
その一方で、一般的な話として「高齢になると、家に対して積極的に関わるのは難しくなってくる」とも。
冒頭の“定年退職後、長い時間を過ごす家をどうするか”という問題がここで再浮上してきます。
Kさんによれば、高齢者は寒さや暑さ、窓の結露があっても、長年住み慣れた家ならば「しかたない」「そういうものだ」と考えがちだといいます。
実はけっこう辛い状況なのに見えなくなっている、あるいはあえて見ない、だからリフォームに踏み切れない…そんな面があるということなのでしょうか。
予算の有無以上に、“心の持ち方”だと思う。自分やそれより高い年代の人々の心情をくんでのKさんの言葉には、重いものがありました。
それでも中西さんは、Kさんのケースにはヒントがたくさんあるといいます。「簡単ではないかもしれないけれど、少しがんばって我が家の現状を見直せば、リフォームで今よりずっと快適な住まいにできる、ということでもありますよね」
そうそう、とKさんが相槌を打ち「とくに地方に行くとそういう例は増えるよ」奥様と共通の趣味として全国の街道を踏破する中、あちこちで見かけたと続けました。
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エコガラスによる窓リフォームのメリットのひとつは“我慢しないで暮らせるようになること”。
Kさん流の徹底したDIYなどなくても、窓を換えると浴室のヒートショックの心配は減り、寝室では縮こまらず眠れて朝はすっと布団から出られる、リビングは夏も冬も長い時間心地よく居られるなど、改善されることはたくさんあります。
健康に直結する事柄も多く、とくに高齢者に対しては省エネ以上に貢献し得る点といえるでしょう。
大切なのは「寒くても暑くても、古い家はそういうものだ」という考えから一歩踏み出し「ここをちょっと変えたら辛くなくなるらしい。試してみようか」と思ってみることかもしれません。
春の一日、まずはぐるりと我が家の姿を眺めてみませんか。