-京都・I邸-
立地 | 京都府宇治市 |
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住宅形態 | 木造軸組2階建 |
住まい手 | 両親+兄+施主+子どもひとり+愛犬2匹 |
リフォーム工期 | 2016年3月から検討、11月工事完了 |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス・複層ガラス |
目の前に6本の道路がぶつかる交差点、向かいには新しい病院。Iさんご一家の住まいのロケーションです。先祖の代からこの地に長く建ち続け、周囲の変化を見守ってきた家を、2016年に大規模リフォームしました。
抱えていた困りごとは“寒さ”と“音”でした。「すきま風もないのに、家の中がどこも寒くて、ここは外なんじゃないかって思うくらい。ダウンジャケットを着て、靴下は2枚重ねていました」とIさん。
数年前には真向かいに大きな病院が完成し、交差点に集まる車の騒音に救急車のサイレンまで加わりました。「寒さと、話もできないほどの騒音とで家にいたくないくらい」
暮らしの拠点としての環境は、厳しさを増していました。
一時は新築も考えたIさんですが、仮住まいの場を探したり荷物を移動することの大変さを考え、最終的に“住み続けながらリフォームしよう”と決意します。
2015年の暮れ、数軒先に社屋を構えるサン・ウインドの高橋秀直さんに相談をもちかけ、足掛け2年にわたる“居ながらリフォーム”が始まりました。
「寒い・暑い・うるさい、のフルコースでした」悩みを聞いた当時を振り返る高橋さんは、リフォームのカナメとして、まずすべての窓にエコガラスと複層ガラスの内窓を設置することをIさんに勧めました。
開口部の断熱性能を上げての寒さ解決に加え、内窓の防音力も考慮しての提案です。
さらに、昔ながらの土壁でほぼ無断熱の状態だった建物外壁に150kgのグラスウール断熱材を入れ、ほぼ全面をやりかえました。
ぐんと厚くなった外壁ですが、結果として内窓分の見込みが十分取れるようになり「(室内に内窓が出っ張るなどの)違和感はとくにありません」とIさん。窓と壁の同時断熱化は、相性のいい工事ともいえそうです。
断熱リフォームと並行して、5人家族それぞれの生活パターンを考えた間取り変更+新たな耐震壁設置、床の張替も行われました。古い瓦屋根も軽い屋根材に交換したため、断熱から耐震防災、内装、プラン変更とまさにフルリフォームの様相を呈することとなったのです。
2016年春から本格的に検討を始め、少しずつ進められた工事は、同年11月に完了。今後は外構へとその舞台を移し、これからも続くとのことでした。
きっちりとした断熱リフォームに加え、木調の壁紙や調湿機能のある壁材も使い、デザイン的にも変身した室内、その居心地は? と問うと、「音はまったく気にならなくなりました。室温については、まだあまり寒くないのでもう少したってからわかるかな?」とIさん。
リフォーム前は電気ストーブ・ガスストーブ・エアコン・電気カーペットを同時につけても寒さを感じていただけに、この冬が楽しみとにっこりしました。
隣で聞いていた高橋さんは、こうアドバイスします。
「従来の住宅よりも圧倒的にわずかな熱源で暖かく、そして涼しくなる家にしました。あとは機器の使い方。我慢しすぎず、いろんなアイテムを生かして、バランスよく、そして効率よくやっていけばいいと思いますね」
それにしてもこれだけのフルリフォームを、ご両親とお兄さん、3歳のご子息との5人で“居ながら”進めていくのは、やはり大変な面もあったのではないでしょうか。
しかしIさんは笑顔で言います。「子どもが一番楽しかったと思います。私も、自分のイメージと違う工事があったらその場ですぐに変更をお願いできるので、よかった」
それを引き取った高橋さんも「Iさんには『現場監督になってください』と何度も言ったんですよ。お客さんのままでは、居ながらリフォームは無理ですから。職人さんに聞かれたら指示してねって」と、こちらも楽しそう。
プロに依頼したらあとはおまかせ、ではなく、どこまでもその家の主として采配を振るう。I邸のように時間をかけての居ながらリフォームの際には、施主のこんな心持ちやスタンスこそが求められる大切な要素なのかもしれません。
施工する側の安全対策・施主尊重を大前提に、変わっていく住まいの環境を見つめ、肌で感じ、家族で話し合いながら暮らす日々は、職人さんともすっかり仲良くなった息子さんのよい思い出となっただけでなく、家族ひとりひとりが“我が家に住まうこと”と改めて向き合った、貴重な時間だったのではないでしょうか。