Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

やらなあかんことはぎょうさんある(前編)

谷山健太郎(たにやま・けんたろう)
1969年生まれ。23歳より(株)サン硝工のガラス職人としてガラス・コーキング施工に従事。2008年、ガラスステーション大阪店店長に抜擢される。
現場で身につけた技術と知識・ノウハウで多くの職人を束ねつつ、顧客に対してはこまやかに気を配り、住まい手の心に寄り添う提案を心がける。2012年度旭硝子(現AGC)いいまどショップリグラス西日本ペアプラス部門3位入賞、2013年度リグラスカップ関西エリア第1位、同年スペーシア全国セールスマラソン優秀賞、ひのまるチェーン大阪支部スペーシアコンテスト第1位、AGCいい窓ショップリグラスゴールドステイタス認定。
職人だったのでしゃべりは苦手と言いながらも、相手を和ませる笑顔と飾らないその話しぶりにファンは多い。お持ちの資格は? の問いに「まごころ一級技能士です」と笑った。


エコガラスが最善とは限らない。お客さまのニーズを一番に考える

事務所に併設されたショールームでお話をうかがった。奥の壁は全面鏡張りされ、広々とした空間が演出されている
ガラスステーション立ち上げ直後から経営を担う立場に。「元は職人だったので、ガラスの勉強から始めたんですよ。エコガラスにはこういう機能があるんやって、カタログから見て(笑)」と屈託のない笑顔

――2007年設立の、まだ新しい会社ですね。

関西の建築物を中心にガラス工事に携わってきた(株)サン硝工が、材工共かつ一般ユーザー向けリフォームに特化した事業として立ち上げた会社です。

僕はサン硝工の職人としてずっと仕事をしていて、6年ほど前に店長になりました。
開設当初は事務スタッフとふたり体制で割れ替えと現場仕事から始め、エコガラスの普及に合わせて機能ガラス中心にシフトしていった感じです。

――HPでは<窓とガラスのコンシェルジュです>とありますが、その考え方は。

ひとつは今までサン硝工で培ってきた経験を生かし、見えないところまで配慮のゆきとどいた施工を行うこと。
例えば昔は、サッシのみぞに詰まったゴミやコンクリート片を職人が掃除せず、そのままガラスを入れたためすぐひび割れてしまう、といったことがよくありました。現場にいなければわからないことです。
こういう面を改めて、細かい部分に気を遣いながら仕事しています。

もうひとつは、提案ですね。
窓のリフォームでも、西側なら遮熱エコガラス、北側なら断熱エコガラスを選んでもらえるように説明します。
全部エコガラスにするのが絶対良いというわけでもないと思うんですよ。そのお部屋のニーズに合った工事を、いろいろな面から考えて提案します。

――常にエコガラスをお勧めするのではないのですか?

会社の売上全体でエコガラスの占める割合は、60〜70%にもなります。 でも、いろんな人がいるじゃないですか。ガラス1枚を「そんなにするんや」と言う人と「そんなんですむんや」と思う人と(笑)

割れ替え以外でご連絡をくださるお客さまは、寒いとか結露がひどいとか、窓まわりが気になっているのは確かなんです。
ただ、問い合わせをいただいた時点でガラスの寸法を教えてもらって概算見積をお出しするのが僕らのやり方で、その時点で「こんなには出せないなあ」と言われる方も多い。

だから、いろんなお客さまに合わせていろんな提案をします。
ペアガラスが入っている窓からの日射が暑い、でもどうしても予算がないというお客さまには、エコガラスへの交換より遮熱塗料を提案することもありますよ。ローコストで熱は入ってこなくなりますから。

来る者拒まず、幅広く<窓まわり>でお役に立ちたい。そして可能なかぎり「できない」とは言わない。それが自分の基本と思っています。


<温度>を伝えたい。だからすべての電話に出る

<窓とガラスのコンシェルジュ>をうたうHPトップ。目的別の窓リフォーム案内バナーのほか、遮熱塗料や太陽光発電など住まいの省・創エネ関連の情報も並ぶ
窓の結露についてオリジナルの解説をするページ。結露の仕組みから室内で多く見られる箇所と健康への影響と続き、結露を防ぐことの意味を十分に伝えた後で、最後にエコガラスによる窓リフォームと商品を紹介する。<モノではなくコトを売る>の具現化

――集客はどのようになさっているのでしょう。

現時点でほぼ100%が、HPをご覧いただいての問い合わせですね。ほかにチラシをまいたり、異業種交流会でできた横のつながりからご紹介いただくこともあります。

――窓やエコガラスのことをわかりやすく教えてくれるHPです。

当初は事務スタッフが作っていましたが、3年ほど前から外部に頼んで作ってもらっています。
最初に「何を最重点にしますか」と聞かれて<おもてなし>って答えたんですよ(笑)せっかく見にきてくれるので、おもてなしの心で作ってくださいと。

――オリンピック招致のプレゼンテーションより先ですね(笑)外部委託する前は、何かが足りなかった?

異業種交流会のセミナーに参加して<コトを伝える>ことを学びました。
ガラスの性能よりも先にお客さまに伝えるべきなのは「毎日結露を拭かなくてもよくなった」とか「その時間を洗濯にあてられるようになった」とか、窓を変えることで、暮らしの中でどんなコトが起こるのか、なんですね。

モノではなくコトを売る、というスタンス。SEO対策も合わせてやっているので、アクセスは増えました。

――お客さまからの問い合わせはメールと電話とどちらがメインですか。

両方です。メールへの返信は意図的にシンプルにせず、お問合せいただいたガラスに関連するウェブサイトのURLを添付したり、機能説明をしたりして、できるだけ丁寧・親切に情報を伝えます。おもてなしですね。

電話も基本的に全部僕が受けます。東京店や北陸店への問い合わせも、全部僕の携帯電話に転送されてくるんですよ。

――全国各店の動向がリアルタイムでわかる反面、おひとりですべて受けるのは大変ではありませんか?

今後スタッフが増えれば、振っていくことになるとは思いますが(笑)
ただ、僕の思いというか<温度>は、下に行くほど伝わっていかなくなるので。今はできるだけ自分が出て、この温度を伝えたいと考えています。


機能ガラスを体感してほしいから。充実のショールーム

「実はAGCスタジオさんを参考にしました」というショールーム。エコガラスの模型はもちろん、壁には色ガラスを装飾的に使い、和室と庭をイメージした実物大の内窓も設置している
ワンタッチで内部の白熱球がつき、放射される熱をガラスがどれだけ遮断できるかを体感できる装置。ほかにも防音や防犯用ガラスの効果を体感できる仕掛けをそろえた

――事務所の手前を展示スペースとして整備しておられますね。

カタログをお持ちするだけでは、お客さまになかなか伝わらない。口で 説明するより体感して納得していただけるように... そんな考えのもと<安心快適体感ルーム>と銘打って作ったショールームです。

以前は事務所とは別に店舗を借りて、家賃も払ってやっていたんですが、 なかなか来ていただけなくて...(笑)今は少しこぢんまりとしています。

――どのような方が来られるんですか。

HPやチラシを見た近辺の方ですね。半径10キロ圏内かな。
機能ガラスがどんなものなのかを知りたくて来た、とおっしゃる方がほとんどです。自分のお住まいに実際に取り入れることを視野に入れていて、どの程度の機能を持っているのか実感されたいのだと思います。
そんな思いにおこたえできるよう、カタログの数字だけでは伝わりづらい「どれくらい違うのか」を体感できる場にしています。

――とてもきれいなショールームですが、展示以外にどのような使われ方を?

商談や打合せはもちろん、社内会議もここでやります。
一般のお客さまにももっと来ていただきたいのですが、結構田舎なのでね(笑)
お客さまによっては、見積にうかがったときに「よかったら見にきませんか」とお声がけしています。より多くの方々においでいただけるよう、今はいろいろ考えているところです。


取材日:2014年3月26日
聞き手:二階幸恵
撮影:中谷正人

谷山 健太郎さん(後編)さん 近い将来、新しい仕事がまた生まれる 6月1日掲載予定
タバタサッシ(株式会社T3)
株式会社ガラスステーション
大阪府和泉市
従業員数 5名
事業内容/ガラス・サッシ工事/店舗・オフィス等の内装ガラス・ミラー工事/建築用フィルム工事/ガラス修繕工事/エクステリア工事/建築・産業用ガラス販売/オリジナルガラス商品製作/省エネ・エコに関するサービスと商品販売 等

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